
なぜ、「真面目な努力」は報われないのか?
専門家が告発する、40代婚活が“勝てない市場”である本当の理由
はじめに:なぜ、努力が空転するのか? ― 典型的な2つのケーススタディ
ケースA:研究熱心なAさん(45歳)
彼はまず、ネットで情報を集めた。「今や婚活はアプリが主流」という結論に至り、複数の「おすすめ40代アプリ8選」といった記事を比較検討。
アプリ登録時には、ネットで参考情報やマニュアルを探し、「仕事ができる男」の演出が重要という情報を信じ、プロのカメラマンに依頼してキリっとした表情の写真を撮影した。
しかし、「対象外」と思える女性から「いいね!」がくる一方、希望する女性にはスルーされてしまう。半年間の活動で、会えたのはわずか2人。どちらも、2回目のデートはなかった。
ケースB:真面目なBさん(47歳)
彼もまた、ネットで情報を集めた。「真剣な女性会員が多い」「担当者に任せられる安心感」「成婚率80%」などを判断材料にして結婚相談所を選ぶ。 毎月システムから数名の女性会員のデータが送られてくるが、お見合いを申し込んでも、ほとんど成立しない。
ようやくお見合いが組めても、1時間後には女性から「断り」の連絡が届く。相談員に理由を尋ねたが「今回はご縁がありませんでした」とだけ言われた。
彼らの失敗は、決して他人事ではない。そして、その原因は「努力不足」ではない。 彼らが戦っていたのは、40代男性にとっては、極めて『不利なルール』で進行する、不都合な婚活業界の構造だったのだ。この記事は、その構造を、3つの側面から完全に解き明かすものである。

婚活市場が抱える「歪んだ構造」
努力が無駄になる最初の原因は、判断の基準にしている「情報」そのものが、不正確で非対称な「歪んだ市場」であることだ。
ポイント1:不誠実な情報提供者たち
ネット上には、アフィリエイト報酬目的の記事や、「成婚率80%」といった誇大広告が蔓延している。しかし、業界最大手IBJの決算資料によれば、加盟店の標準的な収益モデルは「会員50名に対し、年間の成婚者はわずか1名」、つまりリアルな成婚率は2%に過ぎない[1]。この圧倒的な情報格差が、最初の判断を誤らせる。
ポイント2:婚活専門ファッション業者の不都合な真実
「婚活専門」を謳う高額なオーダースーツ店や、知識の乏しい買い物同行サービス。なぜ結婚相談所は、そうした選択肢を勧めるのか。その裏には、紹介料(キックバック)を前提とした提携関係が存在することがある。結果として、本当に価値のある、最新のトレンドで高コスパな情報(ユニクロ活用術など)から遠ざけられてしまうのだ。
ポイント3:再現性のない、誤ったノウハウの流布
「メッセージ付きいいね!は効果2倍」「まず『いいね』の数を稼げ」。こうしたノウハウは、一見すると論理的に聞こえる。しかし、その多くは特定の条件下でのみ有効な限定的なテクニックか、あるいは因果関係を取り違えた全くの誤りである。歪んだ情報市場では、こうした再現性の低い情報が「正解」として流布し、努力を空転させる。
抗いがたい「構造的な不一致」
次に、個人の努力では覆すことが難しい、市場に存在する需給のミスマッチや、サービスの構造的限界について解説する。
ポイント1:40代男女の「需給ギャップ」
国勢調査によれば、40代の未婚率は男性が約3割に対し、女性は約2割と、そもそも同年代の未婚女性は少ない[2]。さらにIBJやOmiaiといった実際の婚活サービスの会員データを見ると、40代の登録者は男性が女性の1.5倍~2倍近く存在する[3][4]。つまり、40代男性は常に供給過多の市場で、厳しい競争を強いられているのだ。
ポイント2:婚活に「真剣な女性」というジレマ
「真剣な女性が集まる場」ほど、男性に対する要求が厳しくなる。経済産業省の調査では、結婚相談所の女性は一般の未婚女性に比べ、相手の「年齢」の上限を気にする割合は約4割増え、「年収」に下限を設ける割合は約2.4倍にも跳ね上がる[5]。良かれと思って選んだ「真剣な場」こそが、40代男性にとっては最も評価基準の厳しい、逆風の強い戦場なのである。
ポイント3:婚活サービスの構造的限界
婚活、つまり結婚相手を見つけて、入籍するまでのプロセスは、「探す・交際・決定」という3つの要素で構成される。しかし、世の中の婚活サービスのほとんどは「探す」という機会の提供に特化している。最も専門的なサポートが必要な「交際」「決定」のフェーズで、利用者は専門家のサポートなく一人で戦うことを強いられるのだ。
【補足】
結婚相談所は、会員同士が結婚を前提とした交際をスタートした時点で「成婚」と見なします。このため、交際や決定といった最も難しい局面はサポートの対象外となります。
無意識に陥る「戦略的エラー」
この厳しい環境の中で、さらに多くの男性が無意識に犯してしまっている、成果を下げる行動(エラー)がある。
ポイント1:ターゲティングのエラー
多くの場合、アプローチに制約のないアプリ・ユーザーは、自身の市場価値よりも魅力的な(若い・美しい)女性にアプローチしがちである。ある調査では、男性は自分より3倍も外見レベルが上の女性を狙う傾向が示された6。これは、勝率の低い戦いを自ら選んでいることに他ならない。
ポイント2:出口戦略(デート)のエラー
商談で最高のプレゼンをするために事前準備を徹底するビジネスパーソンが、なぜか婚活のデートでは「行き当たりばったり」になってしまうことがある。初対面の女性と打ち解けた雰囲気を構築できるか否か、雌雄を決するのはわずか15分。この「魔の15分対策」といった出口戦略の欠如が、せっかく掴んだチャンスを水の泡にしている。
ポイント3:第一印象(UI)のエラー
昨今のタイパ重視の傾向により、スマホの情報は高速で読み飛ばされる。アプリの第一画面は、プロフィール写真と価値観を示すアイコンだけで構成されており、人となりを高速で伝えるUIになっているのだ。このUIに最適化できていないプロフィールは、それだけでスルーされる運命にある。このUIで、女性が求める「楽しそう」「価値観が合いそう」という情報を提示できず、「真剣さ」や「強さ」をアピールしてしまう。これはユーザーニーズを無視した、致命的な設計ミスである。
結論
多くの男性の努力が報われないのは、歪んだ市場で、構造的な不一致を抱えながら、無意識の戦略的エラーを繰り返しているからである。それは、40代男性にとっては、極めて『不利なルール』で進行する市場であり、個人の責任では決してない。
しかし、この市場のルールを正確に理解し、正しい戦略を立てれば、勝つことは可能だ。 そのための完全な戦略書が、次にあなたが読むべき記事『40代男性のための婚活「勝利の方程式」』である。
- [1] 株式会社IBJ「2024年12月通期 決算説明資料」(2025年2月)
- [2]令和2年度国勢調査(2020年)
- [3]株式会社IBJ「数字でIBJチェック」(2025年10月)」https://www.ibjapan.com/ibj/data/
- [4]株式会社Omiai「11周年・Omiaiの今を総まとめ」(2023年2月)
- [5]経済産業省「少子化時代の結婚関連産業の動向」(2006年5月)
- [6] Lee, L., Loewenstein, G., & Ariely, D. 「If I’m Not Hot, Are You Hot or Not?」